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[ 転職のケースNo.3 ] 教師から農業経営への転職のケース

Sさん、小学校教員、31才、男性、独身

受け持っているクラスが学級崩壊になってしまい、うつ病を発症し来所されました。

産休を取った先生の代わりに6年生の担任となりました。
生徒も女性の先生から男性の先生に変わったことで、初日は質問攻めにあいながらも受け入れられたという充実感がありました。

親御さんに不安があるのではないかとい考え、学級通信NO.1を配布し、自己紹介と今後の学級運営の方針を掲載しました。小学校最後の1年間を良い想い出が持てるように努力をしようと決意いたしました。

クラスの中で中学受験をする生徒が2割ほどいます。
下校後、塾に通う生徒も多く学力の差があるため、授業に集中することがなく、無駄話をしたり、居眠りをする生徒も目立ち始めました。

教師としての自覚の足りなさを思い知る

夏休みを迎える前に生徒の成績表を作るにあたり、生活指導面を親にも理解してもらうことも大事だと考え、丁寧に書きました。
特に、居眠りをする、忘れ物が多い、授業に集中できていないなど、注意事項が多くなりました。
長所は長所として記載をしましたが、全体的評価は少し厳しいかなという印象でしたが、自分の指導方針を理解してもらいたいという気持ちで生徒に渡しました。

その場で成績表を見た生徒の反応は様々でしたが、特にA君は「なんだよこれー。親に見せられないよー。どうしてこんなこと書くんだよ!」言い、机に投げつけました。
A君は、サッカークラブに所属し、中学受験の勉強にも力を入れている分、授業中に居眠りをすることが多かったのです。

A君の家庭は、親が離婚していて、母親は公務員です。3人兄弟の長男であるA君は家事の手伝いもし、妹、弟の面倒も見ながら生活をしていました。
学校でのA君は、リーダー的存在で、クラスの中心です。A君の怒りをぶつけた行動にクラス中も驚きました。
他の男子生徒も、A君に同調する子が多くS先生を罵倒する言葉を投げかけ大騒ぎになりました。
椅子をガタガタさせたり、体操袋を投げつけあったりと不満をぶつけてきます。異様な雰囲気に隣のクラスの年配の女性教師が駆けつけてきました。
S先生に詰め寄っているA君をなだめ、席につかせ話を聞くことにしました。

S先生は、A君の暴力的な行動が周囲の男子生徒を巻き込み、こんなに大きな騒ぎになってしまったことに驚きを隠せません。また、自分の力でクラスをまとめることができなかったことに、教師としての力量のなさを実感しました。

年配の女性教師は、A君の話に耳を傾け、気持ちを理解することができました。A君も成績表に関して納得してくれました。S先生はもう一度生徒一人一人と話をし、自分の気持ちを伝えることができました。

その後、S先生は今回の事件の件で、研修を受講し教師としての自覚の足りなさを知ることになりました。
指導者としての本質、傾職の技術、心理学、学習法など多くの本を読み自分を変える努力をしました。

生徒A君のストレスを知る

夏休みが終わり2学期を迎えた当日、A君とそのグループはS先生の挨拶に応えることもなく、無視し大声で昨日のテレビドラマの話をしています。
注意をしますが聞き入れません。授業が進まないことに文句を言う生徒も出始め、さらに混乱を招いてしまうと思い、A君とグループ男子生徒4人を廊下に出し静かに立っているように伝えました。
しかし、逆に廊下で遊びだしてしまい、他のクラス先生に大声で怒鳴られてしまう結果となりました。

放課後、A君とグループのメンバーと話し合いをすることにしました。
ふてくされた態度でS先生の話を聞くこともしないため、A君と二人だけで話すことにし、他の男子生徒を帰宅させました。するとA君は、ソワソワし、緊張しているようでした。
「家庭の事情を聞くように」と年配の女性教師から言われていたので、A君から事情を聞き始めました。

A君は、母親から頼られていること、妹弟の面倒を見ながら中学受験をしなくてはならないプレッシャーがあること、サッカーではキャプテンと期待されていることがあり、ストレスの発散ができていない様子でした。

小学校1年生の頃、親の離婚があり父親不在のままで母親を支えなくてはと、良い子にしてきました。
男性の先生が担任になる聞き、当初はとても嬉しかった。先生にいろんなことを相談しようと思っていた。あまえているとおもわれないように、勉強も頑張って認めてもらいたかった。

しかし、あの成績表を母親に見せたら、母を悲しませるだけで、自分が惨めになると思った。先生は僕の気持ちを理解してくれないと考えてしまったら、溜まっていたエネルギーが爆発してしまった。
A君は自分の気持ちを水が流れるように話して行きました。

S先生は、A君の話を聞きながら涙を流しました。
A君を「ごめんな」と言って抱きしめました。A君の話を聞きながら自分の人生と重なるところがありました。

S先生もA君と同じように現在、田舎には母親が一人で暮らしているので、いつも気にかけながら教師生活をしていました。
母親は農業を営んでいます。妹弟は都会で暮らしており、跡継ぎがいません。
母は「農家は私の代で終わり。生きているうちは頑張って新鮮な野菜を地域に供給するのが、今の楽しみなんだ」と言っていました。

S先生の転職

その後、カウンセリングを受け、自身の気持ちを整理するために来所されました。また、田舎で農家を継ぐ決心をすることにもなりました。

やはり、きっかけはA君との出会いです。教師になった動機を聞くと、サラリーマンには向いていないし、教師であれば生活が安定するだろうと考えていただけだったと伝えてきました。
こんないい加減な気持ちの自分が教師になり、将来のある子供達の指導者になって良いのかという戸惑いはいつもあったようです。
学級崩壊がありさらに自信も無くなり、土に触れ野菜を作ることが自分に合っていると初めて実感したのです。

S先生は、その後教師を退職し、母親と共に野菜作りに専念し、ホームページを作り全国に配送できるシステムを作りました。
日に焼けた顔で来所されたSさんは、立派な農業経営者でした。

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