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定年後の夫との生活に疲れた主婦

B子さんの家族構成と結婚生活

B子さん(60歳)は専業主婦で、夫(67歳)は2年前に定年を迎え、子ども二人は結婚してそれぞれ独立し、孫が3人います。

B子さんは、28歳の時に社内で知り合ったAさんと結婚し、その後、夫の希望もあり、専業主婦として、出張の多い夫のサポートと育児に専念してきました。

夫の定年とB子さんの変化

夫は2年前、43年勤めた企業を定年退職しました。B子さんは、夫の定年後の生活に疲れ、心療内科を受診し、うつ病と診断され、「医師からカウンセリングを受けるように言われた」と娘さんに付き添われて来所しました。

B子さんの表情は暗く、顔色も悪く手も震えていました。事情を聞くと、1年前から不眠が続き、頭痛・吐き気が始まり、家事も出来ず、ふさぎ込む日が続いていました。

夫の退職後の生活とB子さんの孤立

B子さんは、友人も多く明朗な性格で、家事もてきぱきとこなし、趣味は絵を描くことと、庭の手入れです。

夫が退職した日は、これから二人だけの生活が始まるんだなと思うと、楽しさと一抹の不安を感じ、複雑な気持ちでした。

翌月から夫は、食器棚の配置と食卓の位置が良くないと言い、家具の配置を変えるために間取り図を作り始めました。夫がスケールを持ち、ノートに書き込む姿を見たB子さんは、今まで作り上げた家を壊されるような気分になりました。

また、夫は庭の花壇に目を向け、新種の花を買ってきては植え替えを始めました。定年後にしたかったことは、家の模様替えと、花壇の手入れだったんだと改めて知らされました。

1ヶ月後には、夫仕様の家に様変わりしてしまい、B子さんの居場所がなく、今まで自分が作り上げた物を全否定されてしまい、孤立感が強くなりました。

夫の仕事観と家庭での影響

夫の仕事観は、「成果をださずして仕事とは言えない」が口癖でした。その分評価も高く、地位も上がってきました。部下に対しても、成果をもとめますから、厳しい上司で指導力もあります。

企業統合も乗り越え、眠れぬ夜もありながら、翌日、海外出張に出向く日が続き、ハードワークをこなしてきました。その分、家の事はB子さんに全て任せて、仕事に打ち込めたのです。

定年退職日を早く望んでいたB子さんは、これで夫は仕事から解放されると考えていました。しかし、長年の仕事の取り組み方や、考え方はすぐに変わりません。

B子さんは、退職3日目に夫に頼まれた用を済ませ、夫に報告すると「ごくろうさん」と、まるで部下に言う口調で言われたことが印象に残っていました。私は「今日から夫の部下になるのかな」と、はじめて感じました。

家庭内の変化とB子さんの心理的負担

惣菜をつくり、器を出そうとするとあるはずのところに食器がなく、あちこち探すことが多くなりました。毎日食器の位置が変わります。食事作りに不自由な台所でも不満も言えず、感情を抑圧していたのです。

B子さんは、長年、家族のために働いてきた夫に、自分の不満な気持ちをぶつけると、夫の楽しみを奪うような気がして言えませんでした。

ある日、B子さんは無意識に夫の背広をハサミで切り刻んでいました。そんな姿を見た夫は「何をしているんだ!!」と大声で怒鳴りハサミを取り上げました。B子さんは、「もう働かないんだから、背広はいらないでしょ」と言いながら泣き崩れました。夫はB子さんの言っている意味が分からず、異様な光景に戸惑いました。

退職後を見据えて夫婦の価値観のアップデートを

定年後の夫婦の過ごし方は、それまでの価値観を見直す時期なのです。定年後の男性は、自分の好きな事をして、今までの仕事から解放されたいと考えています。家族のために働いてきたという強い観念もありますから自由を求めるでしょう。

また、働く夫を支え、家事、育児をこなしてきた妻は自分なりのルールを決めてきました。

夫婦は退職する1年前から、具体的に定年後の生活を話し合う事が必要です。今までの生活習慣や、時間、年金、趣味、友人関係、老後の生活等、多くの事を見直す良い機会と考え、それぞれの新しい出会いからスタートしてみてはいかがでしょうか。

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