ケース① Aさん、24歳、入社1年目、既婚、子供2歳
上司とAさんは午後に取引先の会社へ打合わせに行くことになっていました。
Aさんは朝、上司に背広を忘れてきたので、家に取りに行きたいと伝え、一旦帰宅しました。
ところが、時間が迫ってきてもAさんは戻ってきません。
連絡をするも繋がりません。
仕方なく、上司は1人で打ち合わせに行きました。
結局その日はAさんからの連絡はありませんでした。
翌朝、Aさんから午後から出社するとの連絡がありました。
上司が理由を聞くと
「妻から子供が熱を出しているから会社を休んで欲しいといわれていたが、今日は大事な仕事があるから休めないと妻にはいって一度は出社した。しかし、その後、妻から何度も連絡があり、背広を忘れたという口実で帰宅した。会社から連絡があったが、嘘をついてしまっている罪悪感で返信できなかった。妻は仕事への理解が無く、子育てを優先している。残業が多い仕事のため、帰宅が深夜になると、妻の不機嫌な顔が目に浮かび、家に帰るのが辛くなる。定時に帰れる仕事に転職をしてほしいとまでいわれている。どうしていいのかわからない」
と、困惑して訴えてきました。
上司は愕然として、現代の若者の考えってこんな感じなのか…と、部下の指示に悩み来所されました。
ケース② Bさん、27歳、中途採用2年目、独身
地方への出張が多く、九州、北海道は泊まりがけでの出張となります。
営業報告は当日、上司にメールをすることになっています。
1年目は上司と同行することが多かったのですが、2年目は取引先との基本的なやり取りも慣れてきました。1人での仕事も任され出張も率先してこなしてきました。
ある日、2泊3日の九州出張に行っていたBさんから2泊目の営業報告が届きません。
上司は翌日帰社してから理由を聞こうと考えていましたが、Bさんは出社せず、無断欠勤となりました。
取引先、自宅にも連絡をしますが、応答がありません。
翌々日、自宅を訪ねると、Bさんが申し訳なさそうにドアを開けました。
連絡が取れなくなった理由を聞くと
「出張最終日、九州の友人と夜中まで酒を飲み、酔いつぶれてしまった。友人と別れた後、路上で寝てしまった。気がつくと財布、空港券が無く、交番に駆け込んだ。事情を説明しているうちに夜が明けてしまった。ホテルに帰り、友人に一部始終を話し、お金を借りて自宅に帰ってきた。報告をしていないこと、自分のだらしなさに後悔してしまい、会社に行けなくなった。こんな自分を会社は許してくれないだろう。退社するしかないと思っている。クビですよね?」
と訴えました。
上司は愕然とし、部下の対処に悩み相談に来所されました。
ケース③ Cさん、22歳、入社1年目、独身
Cさんは真面目で誠実、実直な青年で、仕事にも積極的で責任感があります。
配属された経理では期待の新人として迎え入られました。経理の基礎を先輩から指導を受け3カ月が経ちました。
しばらくして、上司は先輩にCさんの仕事状況を聞きました。
「指導している内容のメモを取らない。同じミスを何度もする。集中力が無く仕事がはかどらない」と、報告を受けました。
それ以来上司は、Cさんの行動をチェックして様子を見ていました。
すると、会議中にもかかわらず居眠りをしていて、メモを取らないことが多い。残業時間が多い。トイレに行くのか離席が目立つ、携帯電話を見ることが多いなど落ち着きがありません。
そこで、ある日、会議で居眠りをしていたCさをに上司が「居眠りしている場合じゃないだろ!今どんな内容を話しているのか言ってみろ!」と、怒鳴りました。
Cさんは答えることができず、会議室を飛び出しました。その後Cさんは誰にも告げず、帰宅しました。
ちょっと言い過ぎたかな…と、反省をした上司はCさんに連絡をしますが応答がありません。
翌朝、上司はCさん宅を訪ね、話を聞きました。
Cさんは
「皆の前で、怒鳴られ恥をかいた。自分は仕事ができない人間だとレッテルを貼られた。先輩にはもっと丁寧に教えて欲しい。メモを取れともいわれるが、内容が全然頭に入ってこない。また、電話の音、人の話し声や笑い声、キーボードを叩く音に気を取られてしまう。一度にいくつもの仕事を任されると、優先順位がわからなくなり、結果、手を付けずに放置している。自分でもどうしていいのかわからならい。自分は病気なのかと思っている。連絡をしなかったのは自分が役に立たない人間だと思われているので連絡しなかった」
と、Cさんは上司に言いました。
上司は、部下の対処に悩み来所されました。
上司へのアドバイス
どのケースも社会人としての未熟さが目立ちます。
ミスをすると上司に注意されること、叱られることを想像し、萎縮し、人格を否定されることを考えてしまいます。
叱られるという経験があまりなく、嫌われる、憎まれてしまうという幼稚な感情を持ってしまいます。
社会人として組織の中で「働く」経験がないのですから、指導のための注意であり、スキルや対人関係を学ぶためにも上司の役割は重要です。
上司は「働く、稼ぐ、組織での立場」をじっくりと部下に伝え、育てることが必要なのです。
家庭教育を企業が担う時代になってきているということです。