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夫に先立たれたA子さんの生き方 [その2]

夫に先立たれたA子さんの生き方 [その1]から続く:

夫B氏、50歳、会社員
A子さん53歳、専業主婦、娘25歳既婚

A子さんの成長

夫との夫婦関係がうまくいかず、友人の紹介でD氏とお付き合いをはじめ、彼に深い感情をもったA子さんでしたが、D氏からの突然の別れで混乱してしまいました。
A子さんはD氏との別れから自分の未熟さに気がつきました。
夫の理解が得られない不満を他の男性と恋愛感情を持つことで一時的な避難をしてしまったのです。

不倫は人間としての様々な問題に立ち向かえない弱さを露呈しています。
夫婦の問題を解決するためには自分の弱さを見つめたり、欲求のコントロールをしたり、答えの出ないことに苦しみます。
学友のC子さんは人生一度しかないのだから楽しめばいい、大人である以上お互いの責任だから、夫や妻に気付かれずに会うことが思いやりだと言い切る女性でした。

A子さんは、C子さんの持論に揺れ動きながら一つの結論を出しました。
楽しく生きることは正しい。
しかし、私は他人に対して恥ずかしいことをしていないか、こんな自問から自分勝手な不倫は恥であるという答えを出したのです。
A子さんは大きな波を超えました。

A子さんは28歳で長女を出産しました。
夫は相変わらず仕事で忙しく、子供の寝顔を見て就寝し、朝早く出勤していきます。
A子さんは子供が日々成長していくことに関われる喜びを感じています。
1日が短く充実していました。

夫がうつ病に

子供が小学校4年生の頃、朝早く起きてくるはずの夫が起きて来ません。
様子を見にいくと「今日は休む」と一日中床に伏していたのです。
そんな日が3日も続いたので、病院へ行くことを勧めると、心療内科に行くと出かけたのです。
帰宅した夫は「うつ病」で1カ月の自宅療養だといい、寝室に入っていきました。

何も語らない夫に何もできないA子さんの焦燥感は募ります。食事も摂らず入浴もしない、寝ているだけの生活が1カ月近く続きました。
休職期間が過ぎる頃、病院に出かける夫が「病院の先生から奥さんも一緒にきてくれないかといわれているのだが、来てくれないか?」と伝えてきました。
用意をして一緒に行くと、先生からうつ病の症状と日常生活のサポートの説明を受けました。
先生から、「ご主人は責任感が強く我慢強くストレスを内に溜めこむタイプです。できれば家庭内で気持ちを解消する雰囲気を作って欲しい、自殺の可能性も高いです」

A子さんは、ストレスを解消させるといっても、夫の考えていることなど話し合ったこともありません。
仕事一筋の人間で、家庭は休憩場所くらいとしか考えていないだろうと思っていました。
2カ月の休職期間は、睡眠薬の効果なのかよく寝ていました。
一日中パジャマ姿で、ヒゲも伸び放題、娘が話しかけても会話になりません。
A子さんは、働き詰めだった夫に休憩することの大切さや、夫を支えるのは家族であると伝えましたが、気分の変化が激しい日々が続きました。

休職3カ月が経った頃から夫婦で午後散歩に行くことが増えました。
運動不足解消と、日光に当たることが目的でした。
そんな時夫が「こうやって2人で歩くのっていいよな」とつぶやきました。
A子さんは耳を疑いました。
自分の存在を夫に認めてもらえた嬉しさを感じ取った瞬間でした。

その日以来、散歩のたびに夫は会社での不満や、また自分の未熟さ、人生は仕事ばかりではないとの気づきを話してくれました。
穏やかな日々が続き、休職6カ月に復職しました。

復職後の夫

B氏は復職後、営業職から総務課へ異動しました。
慣れない仕事でしたが働き方を変えました。

休日は学生時代に趣味だったカメラを手に山歩きに時間を費やすようになり、とても充実していました。
時には夫婦で山を登り、帰宅後はその日の出来事を話したり、次回の計画を立てたりと、夫の情緒的な優しさに触れ、今まで抱いていた結婚の理想像を手に入れたのです。
ますます夫との絆が強くなっていきました。

そんな中、長女の結婚も決まり、バージンロードを歩く夫は、とても幸せそうでした。
これからは私達夫婦で幸せな老後を築いていこうと心に決めた日でした。

突然のガン宣告

それから1年後、夫は医師からガン宣告を受けたのです。
二人で築いていくはずの人生がガラガラと崩れていきました。
余命6カ月の宣告は夫婦に重くのし掛かりました。
闘病生活は壮絶なものでした。
辛さのあまり言い争いになることもありましたが、夫は、感情的になったA子さんに感謝の言葉をかけてくれ、A子さんの手を優しく包んでくれる日々が多くなりました。

夫の死

夫が倒れたのは、A子さんが夕食の準備をしている時でした。
緊急入院となりましたが、医師からは今日が峠ですと告げられました。
夫の名前を呼ぶも反応なくその数時間後夫は息を引き取りました。
享年50歳でした。

亡くなった夫との生活を語ってくれたAさんは、夫の最後の言葉を遠くを見つめながら語ってくれました。
夕食の準備をしているA子さんに「今日はブリ大根かな?僕は君のブリ大根が一番好きだよ。楽しみに待っているよ」でした。
夫を亡くしたA子さんは、これからは夫の想い出と共に生きて行く決心を静かに話してくれました。

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